研究概要 |
1. 2つの再配分不変空間X及びYのノルムに関する、離散時径数増加過程のためのノノレム不等式を、ある種の線形作用素の有界性を用いて証明した。また、これを用いて種々の新しいマルチンゲール不等式を確立した。その中で特に、マルチンゲールfの絶対値のp乗のDoob分解に関するノルム不等式は、レフェリーより、「潜在的に大変有用」との評価を得ている。ここに詳しく記すことはできないが、この研究によって得られた増加過程に関する不等式は、大変一般的な設定の下に証明された結果であり、その応用としてマルチンゲールだけに限らず、更に多くの確率過程に関する新しいノルム不等式を証明することが可能であろうと思われる。 2. (X,‖‖)を確率空間(Ω,Σ,P)上のBanach関数空間とする。Ω上のマルチンゲールfに対し、そのsquare functionをSfで表し、maximal functionをMfで表すことにする。すべてのマルチンゲールfに対し、不等式‖Mf‖≦C‖Sf‖が成立するためには、Xが再配分不変空間でなければならないことを証明した。すでに知られている結果とあわせて、不等式‖Mf‖≦C‖Sf‖が成り立つための必要十分条件は、Xが再配分不変、かつ、そのlower Boyd index α(X)がα(X)>0を満たすことであることがわかる。更に、すべてのマルチンゲールfに対し‖Mf‖≦C‖Sf‖が成り立つと仮定すれば、その逆向きの不等式‖Sf‖≦C‖Mf‖も成立することを証明した。また、不等式‖Mf‖≦C‖Sf‖の右辺のノルムを別の再配分不変空間のノルムに置き換えた不等式を考察し、その不等式が成り立っための必要十分条件を与えた。
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