表現の誘導と制限の間には強い双対性・類似性があることがよく知られている。前回交付を受けた課題研究「可解リ-群の単項表現」において、フランスの共同研究者達とともに巾零リー群の単項表現とそれに随伴する不変微分作用素環の構造を軌道の方法の枠組を用いて詳しく調べ幾つかの興味深い結果を得、それらの諸結果に対応する性質を表現の制限について考察する研究をチュニジア・スファックス大学のBaklouti氏と、更にフランス・メッス大学のLudwig氏と開始した。昨年度成功したと思われた、巾零リー群Gの規約ユニタリ表現πの解析部分群Κへの制限π|Κに対する超関数版のFrobeniusの相互律の証明に不具合が見つかり、今のところ例えばΚが正規部分群であるとかの付帯条件下でしかできていない。いずれにしても、π|Κに関する研究を進めた。9月末に学位審査員としてチュニジア・スファックス大学に招かれた際にBaklouti氏と、また10月初めに京都大学で開催された「リー群の表現:解析と幾何」の日独セミナーの際に招待したLudwig氏と共同研究を遂行した。その結果、この枠組においてもπに対応するGの余随伴軌道Ω(π)の各点においてFrobeniusベクトルが定義され、表現の部分群への制限の既約分解が有限重複度をもつとき、これらのベクトルが不変微分作用素の同時固有超関数となり、固有値としてΩ(π)上のΚ不変有理関数が得られ、更に例えばΚが正規部分群である場合には多項式予想も成立することが分かった。これらの結果については、上記の京都大学におけるセミナーやドイツ・チュービンゲン大学における日独シンポジュームで研究発表し、現在共著論文にまとめており、近く専門雑誌に投稿する予定である。また、ビールフェルト大学のPoguntke教授を招き、可解リー群のL^1-代数、C^*-代数に関し討論を行い、特に対称性と*-正則性に関し彼から多くのことを学んだ。
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