研究概要 |
Gopalswamy et al.(2000)は、SOHO/LASCOによるCME観測から、CME放出時の速度の変化を追跡し、初速度v(0)と初期の加速度a(0)との間に線形の関係a(0)=c0-c1v(0)があることを統計的に示した。これはCMEが太陽面を出発直後の統計結果にすぎないが、太陽面から離れても周辺プラズマからのdragが効くことが予想される。以後の惑星間空間についても速度と加速度の間に同様の関係があると仮定できるならば、これは容易に積分できてv(t)=w-(v(0)-w)exp(-c1t)となり、速度v(t)は、時刻t及び太陽からの距離S(t)が進むに連れて最終速度w=c0/c1(400km/s程度)に収束して行くことになる。これは惑星間空間で観測されるCME速度が狭い範囲に集中する傾向と合致している。最終速度c0/c1は周辺プラズマの速度を代表すると考えられるが1999年11、12月の値は実際に1AU近辺で観測された太陽風速度と一致している。 惑星間空間におけるCMEの見え方として興味深い現象が1994年4月16-18日に探査機「のぞみ」と「ACE」によって観測された。この時「のぞみ」は地球の下流約0.2AU、太陽中心経度差3度という位置にあり、この直前まで「のぞみ」と地球近傍の「ACE」の観測はよく一致していたたにも関わらず、4月16-18日にはそれぞれの探査機で南北成分が逆の磁場を観測した。磁場の様子には共通点もあり、磁場強度がそれまでのスパイラル磁場の3-4倍と強まっていること、南北成分が強いこと、ある方向の磁場がしばらく続いたのち不連続的に方向が急変すること、境界には平面状磁場構造があること、などの特徴がどちらの探査機でも見られた。平面状磁場構造の面の向きもほぼ共通であった。どちらの観測結果ともマグネティッククラウドではなかった(丸橋,2002,private communication)。SOHO/LASCOの観測では4月13日にhalo CMEが報告されており、これが「のぞみ」「ACE」で観測されたと考えられる。この現象の発生経度が太陽の東西のリム上にあった4月5日,4月19日にはCMEが繰り返し放出されている様子が報告されている。以上により、このCMEでは方向の異なるフィラメント状の磁力線がいくつも放出されていたと考えられ、同様の特徴を持つ太陽風磁場は惑星間空間におけるCMEの候補として使える可能性がある。
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