研究概要 |
今年度は以下の2つの進展があった。 1)富士火山の長大溶岩の流動様式に関する地質調査 富士火山の比較的長大な2つの溶岩流,猿橋溶岩と三島溶岩についてそれらの流動過程を示す構造を調査した.猿橋溶岩は多くの露頭において,おおむね10m程度の厚さをもち,下部から,多孔質基底部,中部(柱状節理が見られる),多孔質上部からなっている.上表面にはpahoehoe溶岩特有の縄状構造などが見られる.溶岩流側端部付近において,河川成堆積物の上位に溶岩が乗っている部分では溶岩は3枚のフローユニットからなっており,水冷されて流動初期のローブやチューブが集成したcompound lavaの構造が「残存」しているのが観察される.また水冷溶岩特有の小規模冷却節理をもつクラックが発達している(P seudo-pillow).猿橋溶岩流は,全体としては平均傾斜1度以下の平坦な谷沿い経路をinflateしつつ流動したが,十分水冷される環境では,その途中段階が残存しているといえる.一方三島溶岩は,最下位から上表面までの全層を観察できていないが,裾野市内の黄瀬川河床において良好な連続露頭が観察される.そこでは,少なくとも溶岩流の上部は複数のフローユニットからなっている.各フローユニットの厚さは1〜2メートルないしそれ以下と薄いが,少なくとも流動方向100〜500メートルにわたって1枚のフローユニットは連続している.より下位のユニットの表面にできた開口した冷却割れ目に上位のユニットの溶岩が流れ込んでいたり,下位のユニットがtumuliを形成して,それに上位のユニットがアバットしていたりという産状が見られる.このことから,下位のユニット表面約1mほどの部分が固結する時間間隙をおいて,上位のユニットが流れるといった悠長な流れが推察される.三島溶岩の少なくとも観察された部位では,猿橋溶岩と異なり,十分なinflationは起こっておらず,tumuliやlava riseの上表面から溢流したフローユニットが次々に累重しながら前進していったと考えられる. 2)カールフィッシャー水分計の立ち上げ 比較的含水量の多い黒雲母結晶を用いて以下の基礎実験を行った. (1)試料の付着水が事前に除去できる必要があるが,約0.0064%あった付着水は120℃で24時間以上乾燥すれば完全に除去できる.(2)測定試料重量は0.025gで十分である.(3)少なくとも,黒雲母については,1000℃以下で構造中のOHが気化するため,気化装置の加熱温度は1000℃で十分である.(4)測定試料から気化したHを、測定可能なH20にするため,キャリーガス(窒素)に酸素を混合する必要があり,その酸素混合比率は黒雲母試料で2%(4ml/min),STDでは20%(40ml/min)必要である.(5)水分測定誤差は約2.26%である.
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