研究課題
研究目的本研究では、特に環境変化の影響を受けやすいと考えられる高緯度域を対象に、深海および浅海堆積物の分析を通して数百年オーダーの高い時間分解能での海洋環境変化の実態を明らかにすることを目的としている。対象海域は、北太平洋高緯度海域と南太平洋(特にチリ沖)の南北両太平洋とし、それぞれの海域において記録されている海洋環境変化を対比・比較することにより、両半球間における気候変化のテレコネクションの実態、伝播システムを明らかにすることを目的としている。本年度(〜平成18年3月31日)の研究実施内容昨年に引き続き、チリ沖において採取された海底堆積物試料の各種化学分析を継続して行った。具体的には、チリ沖の湧昇流海域において採取された海底堆積物中の古環境代替指標アルケノンの分析を行い、古水温及び表層水中の二酸化炭素分圧の復元を行った。これら最新の成果発表ならびに情報交換を行うために8件の国内・国際学会に参加した。成果今年度成果のハイライトは、チリ沖での過去10万年にわたる古水温と二酸化炭素分圧の変動である。これまで二酸化炭素分圧の確実な代替指標がなかったために「なぜ氷期に二酸化炭素分圧が低いのか?」という炭素循環における大きな論議に明確な答えが見いだせないままであった。今回、植物プランクトンバイオマーカーのアルケノン分子の安定炭素同位体比が湧昇域においては、二酸化炭素分圧の指標となりうる事を見いだした。その結果、氷期には湧昇の強まりとともに表層にもたらされる二酸化炭素が増え分圧の上昇が明らかとなった。同時に基礎生産量も増えているが、湧昇でもたらされる二酸化炭素分圧を下げるほどの寄与はなく、少なくともチリ沖の湧昇域は、氷期に二酸化炭素の発生源となっている可能性が出て来た。このことから、氷期の低い二酸化炭素分圧を説明するには、生物ポンプ以外の理由を探す必要がある。
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