研究概要 |
風波下の乱流の相似構造およびエネルギー逸散特性を調べるために,室内風洞水槽において風波の水位変動と3次元流速場を測定した。流速の測定には,50Hz程度まで測定可能な小型3チャンネル超音波流速計を用いた。風波は一般的には不規則波であるため,乱流成分の流速の抽出が難しいが,本研究では水面変動とコヒーレントな成分を波動流成分,インコヒーレントな成分を乱流成分として抽出している。抽出された乱流成分の周波数スペクトルは,風波の低周波数側および高周波数側の両方において,Kolmogoroffの5/3乗則がほぽ成立していることが分った。低周波数側の乱れについては,一部風波の非線型性により生じたものと推測されるが,その他の乱れはやや大きなシアーを持つ吹送流により発生したものと考えられた。このことを詳しく調べるために,乱れエネルギーの方程式を用いて,乱れの発生項,移流項,拡散項およぴエネルギー逸散項の各項を測定結果に基き評価した。その結果,ほぼ対数則に従っている吹送流のシアーとReynolds応力の積である乱れの発生項は正の値を示しており,吹送流からも乱れエネルギーが供給されていることが明らかとなった。 風波下の乱れ強度およびReynolds応力の相似構造を調べるために,代表長さとして乱流境界層の厚さ,代表速度として摩擦速度を採り,それらを無次元化することにより分布を比較した。その結果,乱れ強度およびReynolds応力ともに相似性があることが明らかとなった。さらに,乱れエネルギー方程式よりエネルギー逸散率を評価し,その特性についても調べたところ,風速10m/s以上の高風速の場合には相似性があることも見出された。これらのことは,乱れ強度,Reynolds応力およびエネルギー逸散率が,摩擦速度u^*および境界層厚さΔによって規定され,それらの鉛直積分量がこれらの量で評価されることを意味している。したがって,局所相似性の仮定を用いてエネルギー逸散量の評価が可能となった。
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