研究概要 |
地衣菌は通常浸透圧条件下ばかりでなく、乾燥した環境=高浸透圧条件下でも生育するために、二次代謝産物の生産メカニズムが重要な役割を果たしていると考えた。通常浸透圧条件下では寒天培地上で二次代謝物生産が見られない地衣菌でも、液体培地に移すと活発に二次代謝物を生産することがあった。それらの代謝物は高浸透圧寒天培地上で生産されるものと全く異なる構造を持っていた。しかし、菌体が完全に液体培地中に埋没していると、菌体が空気に十分触れる状態に比して、極少量しか生産されなかった。それらの結果から、地衣菌の二次代謝には環境の水分活性が大きく影響を与えると考えた。 地衣藻のより小さな細胞は細胞塊の中央に近い部分に存在しており,菌糸により取り囲まれており,菌糸が地衣藻の細胞に貫入していた.これら細胞にも外見上大きな相違が認められた.例えばG.prunicolaの菌糸と結合した地衣藻の細胞にはクロロプラストが存在せず他の細胞と顕著な違いを見せている。一方P.japonicaの菌糸と結合した地衣藻の細胞では細胞内の緑色の部分はごく一部で,他の大部分は空隙となっている.このように地衣藻の細胞はクロロプラストに満たされた状態から,菌糸が貫入した後に次第に空隙と変化していく現象が,今回実験に用いたG.prunicolaおよびP.japonicaのいずれの場合においても観察された.次に、寒天培地上に静置した地衣菌の細胞塊に,液体培養した地衣藻を添加し,培養を行った.地衣菌の細胞塊の上面に地衣藻の付着は認められなかったが,寒天培地に接した地衣菌の細胞塊の下面では地衣藻の付着は認められた.しかし,いずれの地衣菌の場合においても地衣菌の菌糸が地衣藻の細胞に貫入する現象は認められなかった.水分は、単に生存させるだけでなく、共生関係を促進する作用があることが確認できた。
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