研究概要 |
1.TSの精密測定による理論モデルの検討 回転楕円体モデル(PSM)もしくは変形円筒形モデル(DCM)を使用し、モデルにより計算したTSパターンと測定実験の結果とを比較することで、両モデルの実用性について検証した。有鰾魚において鰾形状を気体反射モデルに適用した場合、全ての個体でPSMとDCMによる推定値には2〜5dB程度の差が生じていた。測定値はPSMの結果と比較的よく一致していた。一方、無鰾魚では、測定した体長範囲ではPSMとDCMのTSパターンはピーク値の付近で比較的よく一致した。 2.理論モデルによるTSの周波数特性に関する検討 ハダカイワシ類の鰾は非常に小さいため、38〜200kHzの範囲内では姿勢によるTSの変化は殆ど見られなかった。この周波数範囲内では、全ての個体で基準化TS(TScm)が-70dB以下を示し、かなり低いことがわかった。また、魚体と鰾が比例的に成長しないことから、有鰾のハダカイワシ類ではTSを体長の2乗で一般化できないことがわかった。このため、本研究では体長(log)と各周波数におけるTSを直線回帰に当てはめることにより、両者の関係を得た。無鰾魚において、姿勢分布で平均化したTS(平均TS)のTScmはL/λ(L:体長,λ:波長)が約2で収束し始めた。その値は全ての魚種で-85〜-90dBを示し、他の無鰾魚における多くの報告の範囲内にあることが判明した。 3.音響調査に基づく生物量推定 ベーリング海アリューシャン海盆南部海域におけるコヒレハダカ分布量を音響調査した。マイクロネクトンによる散乱層はトロールによる魚種確認でこの反応のほとんどが体長10cm前後のコヒレハダカ成魚によるものと判明した。約44000km^2の調査海域における推定バイオマスは280万t、魚群密度は50〜100g/m^2と見積もられた。
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