1.14魚種を対象に、軟X線法を用いて鰾内の気泡の有無、及び形状を観察した。これらの鰾形態には発育段階による変化が見られた。また、多くの魚種では、鰾が体長と比例して成長しないことが示され、さらにいくつかの魚種では、ある発育段階を境に鰾が退行していくことがわかった。 2 密度比はアラハダカを除く5魚種では1.003〜1.020の範囲内にあり、特に、セッキハダカ属の2種では密度比が低く(1.004)、海水と非常に近い値を示した。音速比には顕著な温度特性が見られた。各魚種の生息水温を考慮すると、音速比はコヒレハダカで1.032〜1.039、オオクチイワシでは1.024〜1.036であり、一方、アラハダカの音速比は1.012〜1.024で、他の2魚種に比べて低い値となった。 3.有鰾魚において鰾形状を気体反射モデルに適用した場合、全ての個体でPSMとDCMによる推定値には2〜5dB程度の差が生じていた。測定値はPSMの結果と比較的よく一致していた。一方、無鰾魚では、測定した体長範囲ではPSMとDCMのTSパターンはピーク値の付近で比較的よく一致した。 4.ハダカイワシ類の鰾は非常に小さいため、38〜200kHzの範囲内では姿勢によるTSの変化は殆ど見られなかった。この周波数範囲内では、全ての個体で基準化TS(TScm)が-70dB以下を示し、かなり低いことがわかった。また、魚体と鰾が比例的に成長しないことから、有鰾のハダカイワシ類ではTSを体長の2乗で一般化できないことがわかった。 5.2002年冬季、ベーリング海南部海域におけるコヒレハダカの音響調査の結果、調査海域における推定バイオマスは280万t、魚群密度は50〜100g/m^2と見積もられた。2000年冬季、道東海域におけるトドハダカの音響調査では、推定された平均魚群密度は約35g/m^2で、道東陸棚斜面におけるバイオマス約7.5万tと推定された。
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