研究概要 |
中毒性感染症の治療・予防(非免疫者の)に必須の抗毒素は、ヒト免疫グロブリン製剤(抗破傷風だけ)や異種タンパク質のウマ抗毒素が実用されており、供給源、ウイルス感染の可能性や血清病などの問題がある。そこでヒト型で培養細胞由来のモノクローナル抗毒素(MAb)や、より経済的なその組換え抗毒素が望まれる。私たちは、最も研究が進んでいる破傷風抗毒素をモデルとして、私たちが樹立した理論的にも最高中和性の抗破傷風ヒト型MAb-G6を産生するハイブリドーマ株からMAb-G6の重鎖(H)及び軽鎖(K,κ鎖)の可変部の遺伝子(V_H, V_K)をクローニングし、これらをリンカー(L、[(Gly)4-Ser]n, n:1〜3を発現するヌクレオチド)で連結してファージミドCATAB 5Eに導入しファージディスプレイ法により一本鎖組換え抗体フラグメントScFv-G6(H-Ln-K,またはK-Ln-H)として、まず大腸菌株での発現系を確立した。至適条件下での遺伝子産物(H-L_1-K E tag, C末端にE tagを付加、抗E tagでELISA法により検出を可能)が、私たちの改良法を用いマウス毒性を完全中和(救命)することを初めて見出した。実用化のために、大量のScFv-G6を自然に近いtagなしの形で産生することを目指した結果、酵母Pochia pastorisとScFv-G6遺伝子導入ベクターpPIC9による発現系(まずScFv-G6 H-L_1-K(His)_6tag付、ついでtagなし)を確立することに成功した。より大量の発現系として、薬剤抵抗性遺伝子をもつpPIC9Kベクターを用いG418抵抗性をマーカーとして選択してScFv-G6遺伝子の多コピー組換え体Pichia pastoris株を分離することができ大腸菌系の300倍以上のScFv-G6を産生可能になり実用化の基礎ができた。
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