自己免疫疾患は遺伝背景を有する個体に、環境因子が作用し発症に至る。遺伝要因同定のため、関節リウマチ(RA)をはじめとする自己免疫疾患で、SNPやSib-pair解析が進められているが、全ての疾患で大規模研究を行うのは困難であり、候補遺伝子を絞り込む必要があると考えられる。現状では免疫関連分子を中心に研究が行われている。しかし、免疫関連分子以外の遺伝子が関与する可能性もある。CpG島におけるシトシンのメチル化は遺伝子発現の抑制に関連し、その脱メチル化は遺伝子発現の誘導に関連する。自己免疫疾患のゲノムDNAのメチル化に関して、これまでにX染色体不活化、RA滑膜細胞のクロナリティ、多発性硬化症におけるepigenetic因子、RAの滑膜組織で活性化されている内在性レトロウイルス領域の低メチル化、SLEや薬剤性ループスにおけるゲノム全体の低メチル化に関する報告がある。しかしながら、自己免疫疾患の病因に直結したゲノム領域は同定されていない。本研究の目的は自己免疫疾患に特異的なゲノム上での転写活性化領域をメチル化を指標に同定することであり、これらのゲノム領域は自己免疫疾患の疾患感受性遺伝子の有力な候補であると考えられる。本研究では第1年度として健常人末梢血の免疫担当細胞サブセットやセルラインのゲノムに特異的な脱メチル化領域をUracil-DNA glycosidaseとmung bean exonuclease処理を用いたDNAサブトラクション法により単離し解析し、ヒトゲノム上に多数存在する内在性レトロウイルス配列を遺伝的指標として利用し、その周辺ゲノムの脱メチル化状況をSuppression PCR法により検討した。次年度では、これらの手法を自己免疫疾患に応用し、メチル化を指標に自己免疫疾患に特異的なゲノム領域を明らかにする計画である。
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