研究課題/領域番号 |
14570407
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沢田 哲治 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (50235470)
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研究分担者 |
井上 哲文 東京外国語大学, 保健管理センター, 教授 (30092141)
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キーワード | Suppression PCR / DNAメチル化 / Nuclear factor-kappa B |
研究概要 |
内在性レトロウイルス(HERV)はゲノム上に散在しており、遺伝マーカーとしての有用性のみならず、免疫複合体形成や自身のプロモーター活性による周辺遺伝子の活性化等により、自己疫疾患の病因・病態形成に関与する可能性がある。一方、CpG島におけるシトシン残基の脱メチル化は遺伝子の転写活性と関連することが知られている。今回、HERV周辺のDNAメチル化プロフィールのSuppression PCR法による解析を試みた。メチル化感受性酵素HpaIIで完全に消化したDNA断片にアダプターを付与し、アダプター内のプライマーとHERVに普遍的な蛍光標識プライマー(U5領域、U3領域)を用いてsuppression PCRを行い、HERV配列を含むHpaIIフラグメントの増幅を行った。比較のため、同一の塩基配列を認識するメチル化非感受性酵素MspIのフラグメントも増幅し、フラグメント長を自動シークエンサーで解析した。異なる症例から採取した好中球とリンパ節組織のパターンを比較したところ、MspIフラグメントはほぼ同一であり、MspI/HpaIIによる遺伝多型は検出されなかった。一方、HpaIIフラグメントのパターンは両者で異なっており、ゲノムDNAのメチル化(Epigenetic factor)の相違を反映するものと考えられた。関節リウマチ(RA)の遺伝多型については抗シトルリン抗体のエピトープ形成に重要なシトルリン化酵素の重要性を明らかにしたが、DNAメチル化との関連は不明である。一方、NF-κBはRAの病態に関連した多くの炎症性サイトカイン遺伝子活性化に重要な転写因子である。本研究では、新規に開発されたNF-κB阻害剤薬に関する研究も行った。Computer-aided drug designによりIKK-beta阻害薬として同定された化合物の中から、in vitroにおいてRA滑膜細胞のサイトカイン遺伝子の転写を抑制する化合物を選択した。この化合物はin vitroにおいてTNF-aにより誘導されるRA滑膜細胞のNF-κBの転写エンハンサー活性を抑制するとともに、1〜3mg/kgの用量でマウスコラーゲン関節炎の発症を抑制した。これらの化合物がRA治療に臨床応用されるには安全性など解明すべき点はあるが、今後の進展が期待される。この化合物によるNF-κB阻害に伴って、HERV周辺のメチル化プロフィールは変化した。Suppression PCRは簡便であり、今後多くの自己免疫疾患症例を対象にしたHERV周辺ゲノムDNAメチル化パターンの検出に有用であると考えられる。
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