研究概要 |
前立腺癌の病態生理におけるleukemia inhibitory factor(LIF)の役割につき検討した。まず、前立腺癌細胞株であるPC3,DU145,JCA-1細胞のLIF産生能を検討した。12well plateに各細胞を2x10(6)コの細胞をまき、24時間、48時間、72時間培養し、上清中のLIF活性をELISA法にて測定した。DU145ならびにPC3細胞の培養上清中にはLIFは72時間まで認められなかった。一方、JCA-1細胞においては24,48,72時間培養後にそれぞれ上清中のLIF活性は104pg/ml,220pg/ml,403pg/mlと経時的に上昇した。また、ヌードマウスにこれらの細胞を移植し、血清中のLIF活性や体重や腫瘍体積などを測定した。JCA-1担癌ヌードマウスにおいては経時的に体重減少が認められ、28日後の非担癌ヌードマウスの体重は111.5±5.5%に増加したが、JCA-1担癌ヌードマウスの体重は92.4±5.5%に減少した。非担癌ヌードマウスの血液中にはLIF活性は検出されなかったが、JCA-1ならびにPC3担癌ヌードマウスの血液中のLIF活性はそれぞれ420±114pg/mlと150±71pg/mlであった。PC3担癌ヌードマウスにおいて腫瘍体積とLIF活性の間に有意な相関関係が認められた。PC3担癌ヌードマウスにおける腫瘍単位体積あたり(cc)のLIF活性は21.3±3.13pg/mlであり、それに比べてJCA-1担癌ヌードマウスのLIF活性は67.1±32.0pg/mlと有意に高かった。腫瘍体積や体重減少などの悪液質とLIFなどのサイトカインの関連性がある可能性が示唆された。
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