研究概要 |
前立腺癌細胞株LNCaP,PC-3,DU145を用いてXq12の遺伝子増幅の有無の検討結果 これらの細胞株よりDNAを抽出し制限酵素で消化した後サザンブロットを行った。プローブにはARやXq12のSTSを用い,コントロール細胞から得られたDNAと比較し,Xq12の遺伝子増幅数を測定した。その結果,AR遺伝子に関してはコントロール細胞と比較してLNCaPで遺伝子増幅が起こっており,これがホルモン耐性前立腺癌のメカニズムの一因である可能性が示唆された。また,LNCaPを低アンドロゲン状態で培養を続けることで,アンドロゲン依存性のないサブクローンの確立を試みたが、完全にアンドロゲンフリーで分裂能を持つ細胞株の樹立はできなかった。しかし,合成男性ホルモンR1881を1nM以下の濃度でLNCaPを培養すると,正常濃度で培養したLNCaPと比較してAR遺伝子増幅は1.2〜1.8倍程度増加していた。以上のことから,AR遺伝子増幅がホルモン耐性前立腺癌の発生に関与しているものと考えられた。今後,内分泌療法に抵抗性となった前立腺癌の発生機構にAR遺伝子増幅が如何に関与しているかについて,AR遺伝子のアンチセンスをトランスフェクションし,AR遺伝子産物の多寡が関係するのかどうかを検討すると同時に,抗男性ホルモン受容体抗体を用いてAR遺伝子産物の発現をタンパク質レベルでの検討が必要であると考えられる。
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