研究概要 |
生きたラットを用いて生体内の微量元素の動態をin vivoマルチトレーサー法により非侵襲的に測定すること方法を確立した。in vivoマルチトレーサー法を実現するため半導体検出器の検出効率を計算機によるシミュレーションと実際の測定法の最適化を検討し、ラット頭部と腹部上部における微量元素の動態をガンマ線スペクトル測定から解析する方法を提案することができた。マルチトレーサー溶液は生きた正常およびSe-欠乏ウィスターラット(雄性、8週齢)に尾静脈注射した。スリットを設定したγ線検出器を用いて、生きたラットの頭部および腹部上部より放出されるγ線を測定し、微量元素(Be, Sc, V, Mn, Fe, Co, Zn, As, Se, Rb, Sr, Y, Ru)の分布の時間経過を評価した。各元素の動態は内部標準として^<74>Asの分布を用いた。砒素は血液に集中してそのほかの分布は少なく、かつ血液中の濃度は本研究で目標としている投与後、比較的短い時間では変化量が少ないので^<74>Asの時間経過に対して他の放射性同位体の濃度変化を比較することにより相対的な濃度変化として求めた。経時変化からSe欠乏ラットへの^<56>Coの取込みと排泄は正常ラットに比べて減少していた。また、Se-欠乏ラット体内の^<75>Se,^<54>Mn経時変化は正常ラットよりも有意に減少した。 Se-欠乏ラットは酸化ストレスのモデルとして微量元素の動態が調べられてきているが、本研究で提案した分析法により、トレーサーをラットに投与後、10分から60分の短い時間帯について13種類の元素動態を非侵襲的にしかも全く同一条件で調べることを可能にすることができた。
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