研究概要 |
生きたラットの体内における微量元素の動態をin vivoマルチトレーサー法により外から非侵襲的に評価する方法を確立した。今年度は、とくに非侵襲マルチトレーサーの定量的な評価を検討した。腹部においては、V,Mn,Co,Zn,Se,Rb,Yは金属元素をおもに蓄積し、無毒化する肝臓に多く分布している。Co,V,Yは腹部では相対的に低い分布を示し、80分間の測定時間中に減少をしているので、排泄が速いことを明らかにした。 非侵襲測定は生きたラットの肝臓部における微量元素の投与後、数10分における元素動態の情報を得るのに適している。しかし、加速器により調整されるマルチトレーサーはわずかな照射条件の違いにより、実験ごとに核種の相対的な生成量が異なる.また、ラットは週齢や本研究で用いた酸化ストレスモデルなどでは、体重や臓器の大きさが異なる。さらに、ラットの外側からγ線を測定して、ある測定部位での元素分布を評価するには内部標準の必要が認められた。 ^<74>Asはおもに赤血球に分布することから、血液中におけるほかの元素に対する内部標準となり得る。^<83>RbはKと同じアルカリ金属で体内では細胞質にあり、核種の臓器にほぼ等しく分布するので組織内での他の元素の標準となり得る。^<74>As/^<83>Rb比は血液/組織比の指標となり、この比の減少は、虚血の指標となる。^<74>Asと^<83>Rbは核種の中で長時間に渡り、濃度が一定あるため、測定部位におけるほかの元素の組織あるいは血液中の標準として扱い得ることを示した。また、^<103>Ruは血漿と細胞間隙に存在し、細胞の中には入らないので、^<103>Ru/^<83>Rbも血液/組織比の指標となる。さらにこれらの核種の放射能に対して他の核種の放射能強度比として評価することにより、新しい微量元素の動態の指標となることを示すことができた。
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