研究概要 |
本研究は,在宅要介護高齢者の介護者に対し,携帯電話の電子メール機能を用いて介護者相互のコミュニケーションを行うことにより,介護者の疲労感への影響を探ることを目的に行われた。対象は,在宅要介護高齢者の女性介護者で,携帯電話の未経験者18人である。実験方法は,対象者を6人ずつの3つのメーリングリストに分け,それぞれ2週間の電子メール送信実験を行った。実験開始前および電子メール交信終了時及び2週間の中止期間後の実験終了時を含めた3時点で,介護者の疲労感及び電子メールに対する満足感等の把握を行った。疲労感は,蓄積的疲労徴候調査票(Cumulative Fatigue Symptoms Index : CFSI)で測定した。この尺度は,不安感,抑うつ感,一般的疲労感,慢性疲労,気力の減退,イライラの状態,身体不調の7特性61項目で構成され,「はい」「いいえ」で回答し,「はい」の合計数を得点として用いる。実験開始前に,研究補助員により介護者に対して携帯電話・電子メールの訪問指導が行われた。 結果は以下のとおりである。実験期間中の電子メールの総送信件数は265件で,平均送信件数は15.4±6.2件であった。介護者のメールの送信件数と実験前,メール交信終了後,実験終了時の3時点でのCFSI得点を比較したところ,実験終了時において,不安感,イライラの状態,一般的疲労感,慢性疲労は有意、(p<0.05)に低下した。メール内容を「質問」「受容」「心情」「状況報告」「情報」「感謝」「呼びかけ」「励まし」「意見」の9カテゴリーに分類し,CFSIの変化との関連を検討した結果,「質問」「情報」を多く行った介護者ほどメール交信終了時及び2週間の中止期間後の実験終了時に気力の減退,イライラの状態が有意(p<0.05)に低下した。この結果から,携帯電話による電子メールのネットワーク化は介護者の疲労感の低下に効果があることが示唆された。
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