既存の設備を用いて、Src型キナーゼによるNMDA受容体チロシンリン酸化の解析を行った。NMDA受容体サブユニットNR2A及びNR2Bのリン酸化残基は既に決定した。ジーンターゲティングの手法により、これらのリン酸化されるチロシン残基をフニニルアラニンに改変したマウスの樹立を進めた。樹立したマウスについてはC57BL/6に高度に戻し交配した後に、改変マウスの電気生理学・行動学的な解析を進めた。また、これらの残基のチロシンリン酸化を特異的に認識する抗体は以前作製したが、ウニスタンプロットにしか適用できなかったため、新たに免疫細胞染色や組織染色に使用可能なものを目指して、マウスモノクローナル抗体及びうさぎポリクローナル抗体の作製を進めている。 NMDA受容体中のチロシンリン酸化蛋白質を検討した結果、NMDA受容体結合分子PSD-95がマウス脳内でFyn依存的にリン酸化されることを示した。PSD-95のFynによるリン酸化に伴い、PSD-95とDAP-1との結合は阻害された。 またチロシンリン酸化に依存して、NR2AやNR2Bに結合する分子を検索する過程で新規RhoGAPであるp250GAPをクローニングした。p250GAPは脳に選択的な発現を示し、実際に脳内でp250GAPはNMDA受容体と複合体を形成した。 またp250GAPはCdc42とRhoに対して選択的にGAP活性を示し、神経細胞ではスパインに局在した。更に我々はp250GAPがNMDA受容体を介したスパイン内アクチン骨格制御に寄与することを示し、現在個体・細胞レベルでの検証を進めている。
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