研究概要 |
電界放射電子顕微鏡を用いて,本邦で初めてSPMと呼ばれるデイーゼル車由来の浮遊粒状物質の撮影に成功した。これらは,2.5ミクロン以下で,多くが50ナノ以下の微粒子で,通常の走査電子顕微鏡では画像を得ることができないものである。電界放射電子顕微鏡で,これらの鮮明画像の撮影に成功したばかりでなく,この微粒子の化学組成を電顕にリンクしたエネルギー分散型蛍光X線で分析に成功した。その結果,この浮遊粒子状物質(SPM)は,単体の球でなく,球がつながった葡萄の房状につながっていることが明らかとなった。また,その化学組成は大部分炭素からなり,さらに一部硫黄が含まれており,少量の重金属,カドミウムや亜鉛などが含まれていることが,本邦で初めて明らかとなった。 また,これら浮遊粒子状物質(SPM)の定量的検討を行った結果,尼崎の国道43号線付近の車の通行量がおおいところで浮遊粒子状物質(SPM)が多いことが判明し,車の通行量と浮遊粒子状物質(SPM)とは相関した。さらに,NO2とも相関性が高いことが判明した。 さらに,浮遊粒子状物質(SPM)は六甲山の登山道である灘区高羽付近でも高く,坂道や交差点でも高くなる傾向を有する。 次に,道路脇粉塵を,同じ電界放射電子顕微鏡を用いて分析を行った。その結果,この粉塵中には高い亜鉛やチタンなど重金属微粒子に富むことが判明した。これらは多くがタイブレッド片で、タイヤとアスファルトの摩擦でタイヤの摩耗で生じたもので,この中に,加硫物質として亜鉛が混入されているためであることも判明した。さらに,道路の白線に由来するカルシューム,黄色線に由来するクロームなども存在する。 数マイクロメータの鉄球も大気中や道路脇粉塵中に多数存在することが判明した。これらは近隣の製鉄所に由来したものである。
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