大型草食獣の採食は自然植生に影響を及ぼしているといわれている。奈良公園においては、ニホンジカの採食によりシバ群落が維持されている。またニホンジカが高密度で生育する奈良公園には、豊富な糞虫種がみられ、ニホンジカの糞が糞虫により分解されている。本研究では、草本植物、ニホンジカおよび糞虫の三者間の相互作用を明らかにすることを目的として、奈良公園において試験地を設定した。 2003年度の調査で、おもに以下のことが明らかとなった。 (1)ニホンジカが採食していると考えられる草本植物は13科21種であった。その中で優占的に生育していた種は、シバ、ノチドメおよびアキメヒシバであった。このことから、これら3種を中心とする様々な草本植物の種がニホンジカにより種子を散布されていると考えられた。 (2)ニホンジカの糞には10科15種の草本植物の種子が含まれていた。その中で優占的に見られた種は、シバ、ノチドメ、アキメヒシバおよびツメクサだった。このことから、様々な種の草本植物がニホンジカによって種子を散布されていることが明らかとなった。 (3)夏季における糞虫の糞分解による糞塊消失速度は高く、このことが糞に含まれている種子の出芽に影響を及ぼしていることが推測された。 (4)糞虫による糞分解の有無が、糞に含まれている種子の出芽の影響についてに明らかにした。
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