研究概要 |
FRET(fluorescence energy transfer)を用いたエキソサイトーシス時のリガンド,受容体の細胞内移動動態の解析には,まずFRETを用いたシステムを立ち上げることが必須である。そこでまず,扱いにくい受容体などの膜タンパク質でなく,いままでの実績のある(Mochizuki, Nature, 411,1065,2001),細胞内のメッセンジャー蛋白質であるRhoとそのエフェクター蛋白のPKNとの間のFRET現象の観察を,今回のプロジェクトの前段階として行っている。 細胞はわれわれが今まで多用してきた卵巣癌細胞株Caov3を用い,RhoにCFP,PKNにYFPが付いた蛋白を合成出来るプラスミドを作成した。次いで両者をCaov3に一時的強制発現させることに成功した。FRET現象を観察するには,2分子がそれぞれ均等に発現していなければ,安定したデータを得ることが出来ない。この発現系において,両者がコンスタントに発現できるような条件を検討したが、不安定で、一定した結果を得ることができなかった。そこで同時に両蛋白を等量ずつ発現させるため,二つのプラスミドをhingeで繋いで一つのプラスミドとし,均等に発現できるようなシステムを構築することが出来た。現在このシステムによるlysophosphatidic acid(LPA),あるいはEGFの刺激によるFRET現象の観察をCaov3細胞を用いて行っている。LPAあるいはEGFによる細胞運動能の亢進とFRETとの関係についての相関性についての検討を進めている。
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