研究概要 |
本研究はヒト唾液中に含有されるダイオキシン濃度を測定することを試み,ダイオキシン蓄積の疫学的調査への可能性について検討するとともに,環境汚染にともなう人体への影響についてダイオキシン類と直接接触する歯肉上皮細胞を用いて,生体毒性を調べようとするものである.本年度に得られた結果は,以下の通りである.1.唾液に含有されるダイオキシン類の分析を行うために,本研究の主旨を理解し実験参加に同意した8人の健康成人より唾液を採取し,得られた唾液サンプルにRIラベルした内部標準物質を添加し,ジクロロメタンによって抽出後,LamparskiらやSmithらの方法を改変して妨害成分を除去した.2.全異性体の分離は高分解能ガスクロマトグラフィー(HRGC)を用い,高分解能質量分析計(HRMS)により定性分析するとともにSelected Ion Monitoring(SIM)モードで特定質量数のイオンを選択的にモニターし定量した.これまでに得られた結果から,ヒト唾液中の総コプラナーPCB(CoPCB)濃度は血中の約50%であり,血中には主として6〜7置換のCoPCBがみられるのに対して,唾液中では3〜4置換の化合物がみられることを明らかにした.次年度は,唾液中ダイオキシンについてさらなる詳細な分析を進めるとともに,唾液中に多くみられるダイオキシン類によるヒト歯肉上皮細胞への作用について明らかにすることを計画している.
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