本研究の目的は、構音障害を併せ持つ吃音児の発話特徴について、発話の非流暢性、構音、その他の側面について明らかにすることである。本年度は、当初の研究計画に従い、構音障害吃音児、吃音児の発話データと、認知・言語・運動及び性格傾向などのデータの収集・記録・分析を行った。発話データとして、自由場面と構音検査場面を設定し、構音検査場面では日本音声言語医会と日本聴能言語学会編の構音検査絵カードを使用した。さらに、分析の観点として大澤(1995)による音韻プロセス分析法、Conture(1990)に基づく非流暢性発話分析法を採用した。また、認知・言語・運動及び性格傾向などのデータとして、ITPA言語学習能力診断検査、TS式幼児・児童性格診断検査を使用するとともに、これらに関する質問紙を新たに作成した。その結果、発話の特徴については、昨年度実施した予備研究の結果同様、構音障害吃音児の構音の誤りパターンには発達に典型的なものが多い、構音障害吃音児と吃音児間に吃音の重症度、非流暢性発話のタイプやその他の発話特徴の相違は見られない、ことが示された。また、吃音症状、認知・言語・運動発達、性格傾向については、構音障害吃音児と吃音児との間で一貫した傾向の相違は特に認められなかった。これらについては、各対象児間の個人差が非常に大きく、各群内にさまざまなタイプの児が混在している状況にあることが示唆された。 次年度は、本年度実施した分析をさらに進めて行くとともに、構音障害を併せ持つ吃音児の発話特徴について、認知・言語・運動発達や性格傾向との関連を踏まえて考察を行いたいと考えている。
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