平成15年度の研究成果はおもに二点である。第一点について。アパレルメーカーにおいて総合スーパーとの取引に対する高い依存体質がブランド・マネジメントの機会を制約するという事例を調べた。この事例は取引先の拡大にともない流通業者との関係をマネジメントすることに失敗したため、百貨店ルートでロングセラーとなったブランドが競争力を失ったことを示している。流通業者との取引関係をどのようにマネジメントするのかは、その取引窓口となる営業担当者の権限を越え、事業部または企業本体の直面する経営環境の影響を多大に受けることが、このヒアリング調査から明らかになった。つまり財務的な問題から効率性を追求することが企業全体として優先され、生産段階で少品種大量生産による生産効率の向上が組織目標となり、百貨店ルートという販路よりも総合スーパー・ルートという販路にマーケテイング戦略の重点が置かれる結果となった。第二点について。上記に述べた事例からは、流通業者とのインターフェースをどのようにマネジメントするのかが、ブランドのライフサイクルに大きく影響することが読み取れる。そして企業間の境界に位置する営業担当者が内部組織に対してどのような影響力を持つのか、取引先の流通業者との間でどのような関係を構築するのかが重要となる。事実、ここにあげた事例では百貨店の購買担当者から総合スーパー・ルートに依存するリスクが指摘されている。にもかかわらず、このアパレルメーカーはリスクを回避することができなかった。これは営業担当者が内部組織メンバーに対して影響力を持っていないことが原因であった。そこで実証分析ではロングセラー商品をめぐる商品企画部門、生産部門、営業部門について関連性を測定し、ロングセラー商品への依存体質が成果指標に及ぼす影響を明らかにしたいと考えている。
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