研究概要 |
平成14年度,我が国はノーベル賞を複数受賞した。しかも民間技術者からの受賞もあり,彼らが受けてきた理科教育がにわかに注目されてきている。これは本研究で目指してきた手法の一つであり,これらを体系化する研究が求められているとすれば,本研究はこれを先取りしていたと言えよう。 本研究は,様々な人々を対象に語ってもらった自分史を分析し,科学技術教育を左右する要因を抽出する,定性的かつ実証的な研究である。初年度の平成14年度は研究手法を確立し,データを収集することを第一の目的とした。被験者は,理系研究者,非理系研究者,非研究者に大別されるが,本年度は,本学の全女性教官を対象に自分史を収集した。 その結果,彼らを研究に導いた様々な観点が浮かび上がってきた。両親,兄弟,先輩,恩師といった人的票因,病気を煩ったといった個人的経験などが挙げられる。しかし,同じ要因でも研究者に向かう方向性に惹かれて進むケースと,研究とは反対をむくベクトルに反発して,結果的に研究に向くケースとがある。人の職業を決める要因とその決断を分析しても,一般化は困難であろう。次年度は,幼少時に受けた理科教育(科学技術教育)という観点と,Auto biographyという方法論に焦点をしぼる。 具体的作業の方法としては,ICレコーダーを用いて音声をデジタル化し,さらに音声認識ソフトを用いてそれらを文字化してデータを収集した。IT技術の発展が,本研究のような作業量を要する質的研究を比較的容易にしつつある。
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