研究課題/領域番号 |
14J00981
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永井 祐也 大阪大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害児 / 共同注意 / 社会コミュニケーション / PECS / アイトラッカー / 母子相互交渉 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD)児は発話によるコミュニケーションの基盤と考えられる共同注意など他者と物事を共有する能力の発達に著しい困難を示すことが指摘されている。ASD児を対象とした様々な介入技法が考案されているが、その中でも自発的なコミュニケーションを訓練するPECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)は介入効果のエビデンスが非常に多く、有効な介入技法であると考えられた。そこで、ASD児とその保護者を対象にPECSというコミュニケーションの訓練を含めた個別療育を半年間実施し、ASD児の社会コミュニケーションの発達における副次的な介入効果をPECSの訓練を受けていないASD児と比較・検討した。大学の個別療育を行う前 (4~5月) と個別療育を行った後 (10~11月) に、児童発達支援センターの集団自由遊び場面において、対象児1名あたり各観察期間20分のビデオ撮影を行い、社会コミュニケーション行動 (要求行動や共同注意行動等) の生起数を定量的に分析した。また、個別療育の実施前後にはアイトラッカーによる実験を行い、視線行動の変化を定量的に分析した。その結果、PECSの訓練を受けたASD児(13名)は、PECSの訓練を受けていないASD児(13名)よりも、要求するときに要求相手の顔を見る頻度、自ら他者と注意を共有しようとする行動 (共同注意の開始行動) 、要求や共同注意といったコミュニケーションの文脈における他者に笑いかける頻度、他者の共同注意に応答する頻度がPECSの訓練を受けた後に有意に増加していた。このことから、PECSの訓練を行うことでASD児の前言語期の他者と様々な物事を共有する能力が副次的に促進される可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請1年目は、申請以前から行ってきたサンプルと合わせて、PECSの訓練がASD児の社会コミュニケーションに及ぼす効果について検討を行ってきた。それと同時並行で計画した母子相互交渉の観察を行うためのフィールドワークも予定通りに実施し、次年度に分析を行うことでさらなる研究成果が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画した通りに遂行する予定である。具体的には、平成27年4月に研究協力者を募集し、5月から10月までPECSの訓練を含めた個別療育を実施する。その際に、母子相互交渉の場面を設定し、母親の関わりかけが半年間の個別療育を通して、どのように変化するのかを定量的に分析する予定である。
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