研究課題/領域番号 |
14J01934
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
喬 旦加布 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | チベット / 伝統文化 / 継承 |
研究実績の概要 |
研究対象地域はモンゴル、チベット、漢の文明が交差する地点にあり、歴史的にチベット、トゥ、漢、モンゴルなどの系統の人々が雑居してきた。その歴史が現在の儀礼実践や文化にどのように反映されているかを解明するために研究を進めた。 調査は、7月10日~9月10日に青海省同仁県において、ワォッコル村周辺で伝統的に行われてきた「ルロ祭」と呼ばれる祭祀活動、その後、同省海東地区民和県と互助土族自治県のトゥ族村落においてナトン祭、さらに甘粛省積石県において保安族の言語などについて比較調査を行った。トゥ族の方言を含めた文化変容の状況と移住史との関係について資料を収集することができた。1月30日~3月19日に、同仁県の村落で行われているフコン祭、旧正月に同仁地方の各僧院で行われる仏教のチャムの仮面舞踊、大タンカの開帳儀式などの全チベット文化圏と共通する法会について参与観察と映像による記録、資料収集を行った。 研究成果の公開は、日本文化人類学会第48回研究大会(5月17日~18日)でルロ祭に関する映像の上映と解説を行い、村と祭祀儀礼の変容などについて参加者から有用なコメントを受けた。10月に第62回日本チベット学会研究大会において「チベットアムド地域におけるハワの由来について」の報告を行い、12月に国立民族学博物館で行われた総研大学術フォーラムでポスター発表「祭りに見られる民間宗教と仏教の争い」を行った。平成27年1月24日~25日に国立民族学博物館で開催された国際フォーラム「中国の文化遺産」において「世界遺産レプコン芸術-青海省チベット族の工芸」と題する研究発表を行った。3月には日本映像民俗学の会にて自身の映像放映と解説・討議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
報告者は平成26年度の当初の計画の通り、夏季と冬季の2回の現地調査をおこない、歴史的にチベット族、トゥ族、漢族、モンゴル族の文化が接触・交流してきた地域において、言語、民族的アイデンティティ、儀礼における実践、さらには数十年間におよぶ社会変化を背景に、ごく最近の文化復興がいかに進められるかについて、考察を一層深めるための貴重なデータを得た。また、日本チベット学会、日本文化人類学会、日本映像民俗学の会を含む研究集会において5件の研究発表を行い、1本の論文が査読付きの学会誌に掲載された。以上をもって、順調に計画していた成果を上げたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、引き続き現地調査を実施し、同仁地域の独特な民間信仰と仏教儀礼をめぐる現在の諸問題の理解を一層深めると同時に、フィールド調査のデータをまとめ、報告者の専門分野である日本文化人類学会や日本チベット学会などの学会や研究会で積極的に発表を行う。これらの研究活動を通して地域や国家を超えて人類学者やチベット研究者との議論を行い、チベット語と中国語、日本語などによる投稿論文の執筆と博士論文の執筆に努める。
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