研究課題/領域番号 |
14J03610
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
山本 樹 東京藝術大学, 美術学部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | ボローニャ / カラッチ一族 / 対抗宗教改革 / ガブリエーレ・パレオッティ / 神話画 |
研究実績の概要 |
対抗宗教改革期のボローニャにおける神話画の展開に関する研究として、16世紀後期にかけてこの地で活動したカラッチ一族の作例をいくつか取り上げて考察に取り組んできた。カラッチ一族のボローニャでの活動に関しては、パラッツォ・ファーヴァおよびパラッツォ・マニャーニをひとつの到達点とみて、その他の神話画群がやや等閑視される傾向にある。それらの作品群に着目することで、この時代の神話画の展開について新たな視点を提供しうると考えられる。
本年度は修士論文以来のテーマであるサンピエーリ家のフレスコ作品群に加え、同時代の美術をめぐるより俯瞰的な眺望を得るため、新たにグラッシ家の作品にも着目し、その造形的特質の分析を試みた。現段階では、戦闘後のヘラクレスの瞑想的な姿を示すその図像は、アンドレア・アルチャーティ『エンブレマータ』(1591)と視覚的に類似していることが指摘できるほか、のちローマのパラッツォ・ファルネーゼにてアンニーバレが描くこととなる《憩えるヘラクレス》を予告するものであると考えられる。調査にあたっては長期休暇を利用して現地に赴き、ボローニャ市立アルキジンナジオ図書館および国立古文書館において関連する一次史料を実見することができた。また、現在もカラッチ一族やバルトロメオ・チェージ、ラヴィニア・フォンターナのフレスコ画を所蔵するパラッツォ・セーニを見学し、実際に神話主題の居室装飾を間近で観察する機会を設けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボローニャにおけるカラッチ一族と神話画をめぐる歴史的な状況について、新たな作例にも着目することで、研究を実質的に進展させることができた。また、修士論文から取り組んできたサンピエーリ家の作品群についても、本年5月の美術史学会全国大会にむけて成果をまとめ、口頭発表をおこなうことが決定している。
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今後の研究の推進方策 |
グラッシ家の作例の調査を進めるなかで、カルロ・アントニオ・ピサッリによって18世紀半ばに制作された、カラッチ一族のボローニャの居室装飾に基づく模刻版画集の重要性があらためて強く認識された。今後はここにおさめられた作例を中心に、個々の作品にまつわる図像解釈の問題について考察を進めてゆく。
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