研究課題
本研究は,電磁ノイズや高調波の発生を本質的に低減することのできるマルチレベルインバータを研究対象としており, 将来的に,CPUなどに用いられている半導体集積回路技術を電力変換回路に応用することで,小型かつクリーンな次世代電力変換器を開発しようとするものである。平成26年度においては、主に以下の3項目について検討を行い,成果を得た。1.回路内でマルチレベル出力電圧の源となる複数の電圧を保持するフライングキャパシタは,高周波化により所要静電容量を小さくすることが出来るが,キャパシタを小型化するためには温度の考慮も必要である。所要静電容量および温度上昇を理論的に算出し,インバータの動作条件を考慮して,最適なキャパシタの種類を選定する指針を明確化した。2.インバータの系統連系応用においては,系統電圧の擾乱や急激な負荷変動等が想定され,そのような過渡状態においても,各フライングキャパシタの電圧は規定値に保たれる必要がある。基礎検討として,単相5レベルインバータを用いた系統連系システムを構築し,実証実験を行った。その結果,系統擾乱時および負荷急変時においてもキャパシタの電圧バランスが崩れることなく,正常動作が可能であることを確認した。3.マルチレベルインバータは各デバイスの所要耐圧が低いため,それだけ特性の優れた低耐圧デバイスを用いることができ,また,等価的な半導体チップ面積が大きくなるため,各パワーデバイスの発熱密度も小さくなり,放熱の面でも有利な方式である。試作回路として,三相13レベルフライングキャパシタインバータを作製した。動作実験の結果,出力電力1kW時において,効率98.6%を達成し,計72個のMOSFETから均一に発熱しているため,冷却器を用いずに連続運転が可能であることを実証した。
2: おおむね順調に進展している
研究計画に沿って,フライングキャパシタマルチレベルインバータの集積化に向けた重要な技術課題の解決を図ることができたため,おおむね順調に進展していると判断する。
平成26年度はおおむね順調に進展したことから,平成27年度も引き続きフライングキャパシタマルチレベルインバータの設計,実装について検討を行う予定である。特にワイドバンドギャップ半導体デバイスGaN-HEMTの適用可能性を検討し,高周波化と小型化の限界を追求する予定である。また,研究成果を総括し,論文誌および国際会議で発表する。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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