研究課題/領域番号 |
14J10218
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
瀬尾 亨 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 交通流理論 / プローブ車両 / 交通状態推定 / 車載カメラ / 先進運転支援システム / ITS |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「複数の自動車の車載カメラ情報を統合し,道路ネットワーク交通状態を推定する理論の構築とその実証」である.この目的を達成するため,本研究は交通状態推定理論の定式化と,同推定理論の実証実験による検証から構成される.本年度はその両者共に実施し,それぞれ一定の知見を得るとともに,今後の課題を整理した. まず,各種文献の調査や,研究発表会・国際会議への参加により,最新の研究動向を把握するとともに,本研究の位置付けを明確にした.次に,上記で得た情報を参考にし,プローブ車両により収集される位置・車間距離データに基づく交通状態の推定理論を定式化し,その定性的性質を解析した.その結果,本研究の目的「車載カメラ情報からの道路ネットワーク交通状態の推定理論の構築」を概ね達成できた. シミュレーション実験により,推定理論の定量的性質を検証し,実道実験による検証で必要とされる要件を整理した.実道実験で用いるため,車載カメラで得た画像から車間距離を効率的に測定するコンピュータソフトウェアを開発した.以上の作業を想定以上の速度で完了できたため,当初の計画を繰上げて実道実験データを入手できた.そのデータは,首都高速中央環状線にて20台のプローブ車両が1時間以上にわたって走行し,車載カメラ画像データとGPSログデータを収集したものである.そして,推定理論の実道での性能を検証できた.その結果,本研究の目的「車載カメラ情報からの道路ネットワーク交通状態の推定理論の実証」を概ね達成できたとともに,より優れた推定理論の構築・実証へ向け有用な知見を得た. 以上により,車載カメラ等を装備したプローブ車両が社会に普及した場合,その情報のみに基づき交通状態を推定するために有用な知見が得られた.これは道路ネットワークの広範囲に渡る交通状態を恒常的にモニタリングできる可能性を意味しており,社会的に非常に有意義である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,当初の研究実施計画の内容を十分に達成するのみならず,次年度に計画されていた内容の一部を繰上げて達成できた.その結果,本研究の目的「複数の自動車の車載カメラ情報を統合し,道路ネットワーク交通状態を推定する理論の構築とその実証」に大いに資する知見が得られた.よって,本年度の研究実施状況は良好であったといえる. 当初の計画では,本年度は,研究動向の調査,推定理論の構築,その定性的性質の検証,そのシミュレータ上仮想実験による定量的性質の検証,実道実験のための車間距離測定技術の開発,実道実験の準備を実施する予定であった. 実際には,予定していた計画を期待以上の速度で概ね達成できた.そのため,予定を繰り上げて実道実験データを入手でき,その分析も完了できた.その結果,次年度に予定されていた推定理論の実道での検証を一部遂行できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,推定理論のさらなる高度化・精緻化と,その実験データに基づく検証を進めていく予定である.その際,海外の研究機関へ赴き,現地研究者と協力することも考えている. 実道実験での検証により,構築した推定理論の実道での性能はある程度良好といえるものの,一部限界もあることが定量的に示された.また,構築した推定理論は既存の交通流理論の基本的な部分には適合しているが,高度な交通流理論の知見を十分に反映しているとはいえない.そのため,推定理論に高度な交通流理論を組み込むことで,その合理性と推定精度の向上を図る予定である.
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