清代法律書籍の出版政策という共通テーマの下、研究担当者は主に清律註釈書を対象に、また研究分担者は主に清末国際法関係書を対象に検討を行い、本年度は以下の成果を得た。 【研究担当者分】(1)清末期の條例を反映しまた律註釈を集大成もする《読例存疑》の電子テキスト化を完成した(平成16年4月より寺田浩明のホームページで公開予定。http://www.terada.law.kyoto-u.ac.jp)。(2)定領域研究E班「出版政策研究」の一環として、清律などに見える出版規制について研究し、ニュースレター7号に発表した。(3)条例および律注釈書の分析を基礎とする理論的な研究成果として論文「法、例、および広義の法--清代法律書分析の新たな枠組み」を執筆した。 【研究分担者分】(1)清末における国際法書籍の翻訳出版の過程を精密に跡づけるべく『開国図志』「滑達爾各国律例」(ヴァッテル万民法)について翻訳底本たる英訳原文、その元本たる仏語原本と併せて電子画像をとった。同様に『万国公法』についても英語原文との対照を行った。(2)東京大学東洋文化研究所所蔵「我妻栄旧蔵文書」を調査整理し、我妻栄『中華民国物権法(下)』未刊原稿をはじめとする多数の資料(中国不動産関係資料・中国利息関係資料・中国法院関係資料・南方・蘭印関係資料)の発掘整理を行った。(3)以上の研究のために全国の若手研究者を招聘し二度にわたるワークショップを行った。
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