研究概要 |
1.PPARγヘテロ欠損マウスにおけるレプチン依存件、非依存性経路の分子メカニズムの解明 PPARγヘテロ欠損ob/obマウスと対照のob/obマウス、及びPPARγヘテロ欠損db/dbマウスと対照のdb/dbマウスを定期的に得て、研究は順調に進んでいる。PPARγヘテロ欠損ob/obマウス由来の膵島のインスリン含量、インスリン分泌はob/ob欠損マウス膵島より著しく低下していた原因を明らかにするために、PPARγヘテロ欠損ob/obマウスとob/obマウスの膵島の遺伝子発現の変化をDNA chipによる解析を進めている。 2.CBPヘテロ欠損マウスを用いたPPARγ非依存性のエネルギー・糖・脂質代謝制御経路の同定 PPARγのコアクチベーターCBP(CREB binding protein)欠損マウスがPPARγヘテロ欠損マウスと較べてより顕著な抗肥満、抗糖尿病の表現型を呈し、エネルギー・糖・脂質代謝制御においてPPARγ非依存性経路の存在が示唆された(Nat.Genet.30:221,2002)。CBPヘテロ欠損を導入するのみでob/obマウスの著明な肥満と糖尿病は完全に抑制された。これらの結果はPPARγ非依存性かつレプチン非依存性のエネルギー・糖代謝制御経路の存在を示唆し、現在その詳細な分子メカニズムを検討している。 3.アディポネクチンを介した抗動脈硬化作用の分子メカニズムの解明 アディポネクチン過剰発現マウスをapoE欠損マウスと掛け合わせ、アディポネクチンの動脈硬化に対するin vivoでの作用を検討した。apoE欠損アディポネクチン過剰発現マウスはapoE欠損マウスとほぼ同様の脂質レベルだが、動脈硬化病変は約50%に抑制された(J.Biol.Chem 278:2461,2003)。その機構として、スカベンジャー受容体の発現抑制を介する脂質蓄積の低減とTNFαなど炎症に関わる分子の発現抑制が想定された。 4.アディポネクチン受容体の同定 アディポネクチン受容体のクローニングに成功した(Nature 423:762-769,2003)。7回膜貫通型のアディポネクチン受容体(AdipoR)1は種を超えて酵母にまで保存されていた。ほ乳類に高い相同性(アミノ酸レベルで66.7%)を示す遺伝子が1つだけ存在し、AdipoR2と命名された。これら2つのアディポネクチン受容体(AdipoR1とR2)の同定は新規の抗糖尿病薬、抗動脈硬化薬開発の道を切り開くものと期待される。
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