研究概要 |
生体分子による生命秩序形成において、秩序高度化の要はさまざまなレベルの秩序を繋ぐ生体膜のインターフェイスである。ここでは、情報や物質の交換を通して膜内外の秩序が有機的に結びつけられている。膜インターフェイスの機能発現は、複合体の形成、構造変化の誘起そして新たな相互作用の形成という過程で進むところに特徴がある。ここでの相互作用は、安定複合体の形成のような強固なものとは異なっており、ソフトな分子間相互作用と定義できる。本領域はソフトな分子間相互作用という新しい視点を踏まえつつ、膜インターフェイスを制御する分子メカニズムを構造生物学的な立場から解明することを目的に研究活動に取り組んできた。本年度は、特定領域の成果であるNa^+駆動V型ATPase K-ringの結晶構造の決定(Science)、ATP合成酵素の回転触媒機構の重要部分のNMRによる解明、Mg^<2+>トランスポーターの結晶構造の決定(Nature)、交差緩和法による巨大システムのNMRによる解析等、膜インターフェイスにおけるソフトな分子間相互作用の解明に大きく貢献した成果の取りまとめに取り組んだ。このとり組みを通して結晶構造解析と溶液NMR、固体NMR,計算機科学の組み合わせがソフトな相互作用の強力な解析法であることが明らかになった。この取りまとめでは、これらの成果と本特定領域のさまざまなとり組み、評価担当者の意見等を362ページの研究成果報告書にまとめて文部科学省に提出するとともに、各方面に広く配布した。また、この間に本特定領域の研究および活動金体についての事後評価があり、高い評価を得た。さらに、国際、国内学会において本領域の成果を広める活動に取り組んだ。
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