ショウジョウバエにおいて生殖細胞の分化に関与しているRNAヘリケースであるVasaとRNA、ATPアナログとの三重複合体のX線結晶構造解析にすでに成功していた。この構造を基に酵素の変異体解析を行い、DEAD-box RNAヘリケースがRNA二重鎖をほどく分子機構を推定し、投稿論文として発表した。DEAD-box RNAヘリケースは真核生物に広く存在しており、その活性機構を解き明かした本研究の意義は大きい。 一部の古細菌においてシステイン生合成の第一段階として機能するホスホセリルtRNA合成酵素とtRNA^<cys>との複合体の構造解析に成功し、リン酸化セリンをタンパク質の部位特異的に導入する技術につながる基盤を確立した。古細菌由来フェニルアラニルtRNA合成酵素の校正ドメインの構造解析に成功した。変異体の活性測定とあわせて、誤って導入された活性化チロシンの校正機構の詳細について明らかにし、発表した。また、高度高熱菌由来グルタミルtRNA合成酵素とtRNA^<Glu>とが協調してグルタミン酸を特異的に認識する機構を結晶構造学的に明らかにし、発表した。さらに、アスパラギニルtRNA合成酵素とアスパラギンとの複合体の高分解能構造の解析に成功し、変異体の解析とあわせて水を介したアスパラギンの詳細な認識機構を解明し、発表した。 古細菌由来Trm56およびTrm5というtRNAの修飾を担うメチル基転移酵素について構造解析に既に成功している。また、tRNA前駆体の3'末端の成熟化に関与するRNase ZとtRNAとの複合体の構造解析にも成功している。 分裂酵母由来RNAポリメラーゼIIIの構成分子であるC17/25複合体の良質な電子密度を得ることに成功しており、現在構造精密化を行っている。
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