研究概要 |
平成15年度は、研究代表者である末澤と分担者の中澤に加えて、柳澤秀一(東京学芸大学非常勤講師)、光吉淑江(University of Alberta, PhD Candidate)、南野大介(筑波大学大学院)、小川暁道(東京外国語大学大学院)、小川典子(東京大学大学院)らが研究協力者としてプロジェクトに参加した。 末澤、中澤、柳澤はキエフ、ハリコフ、リヴィウへ出張して専門家へのインタビューや資料・情報収集を行ない、ウクライナ憲法制定からまだ10年も経ていないにもかかわらず、既に大統領の権限や議会選など統治の根本に関わる重要な条項の改正が論議されており、クチマ大統領周辺の権力関係とも絡んで複雑な様相を呈していること、10年がかりで完成したウクライナ語の様々な辞書が2003年以降大量に出回り、ロシア語が優勢な東部では「上からのウクライナ語化」に反発する動きもあること、他方で首都キエフにおいてさえネイティブとしてウクライナ語を操る住民は一部であり国語化は完全ではないこと、外交面ではNATOやロシアに対する有効なカードを失い四面楚歌に陥っていること等の情報を得た。また、小川は北海道大学スラブ研究センターで資料収集を行ない、出張者がウクライナで購入した貴重な文献も含め、今年度だけで100冊に近い文献・資料を入手した。 光吉は、リヴィウトロントで開催された2つの国際会議で研究成果を発表し、南野も12月にシンフェローポリで行われたクリミア・タタール人問題に関する国際会議で社会統合プロセスに関する報告を行った。また、中澤と末澤は筑波大学大学院地域研究研究科主催の公開講演会「新生国家ウクライナの現在」において講演した。 これら初年度の成果は、平成16、17年度の研究に向けて極めて有益な土台となった。
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