研究分担者 |
船津 衛 放送大学, 教養学部, 教授 (90047184)
安藤 清志 東洋大学, 社会学部, 教授 (50125978)
北村 英哉 東洋大学, 社会学部, 教授 (70234284)
清水 直治 東洋大学, 文学部, 教授 (80134774)
片山 美由紀 東洋大学, 社会学部, 助教授 (50265229)
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研究概要 |
本研究では、感情は、自他および自他の関係調整にとって有用なシグナルを発するという社会的な機能を有すると捉え、そのような社会的な感情の起源と機能(研究1)、およびその理解の発達(研究2)、さらに生活の諸領域での感情状態の志向性(研究3)について検討し、また同時平行で理論的検討をおこない、17年度には次のような成果を得た。 研究1では、決断という社会的な感情を取り上げ、不快な出来事,関心のあること,決断した経験のそれぞれを想起した際の,生理的影響について,心拍の測定を行った。決断の感情の起源として,怒り・攻撃を想定していたが,生理的なレベルからは矛盾のない結果が得られた。また、罪悪感という社会的な感情については、雑誌の広告を収集し、罪悪感広告の頻度が0.7%であり、内容としては予期罪悪感が最多であったことを見出した。研究2では、幼児に対して感情の機能についてインタビューし、ポジティブな感情の機能については5歳時点でも語れるがネガティブな感情の機能については1年後であっても充分には語れないことを見出した。また、健常幼児及び自閉症児者を対象にして、表情認知及び「心の理論」課題を用いて、他者の感情理解に関する実験を行い、健常幼児では加齢とともに課題の通過率は上昇する傾向があったが、自閉症児者では課題の通過が困難であるばかりでなく、表情認知が不適切な場合が多かったことを見出した。研究3では豊かな感情生活をおくる際の感情状態表現語の分析を行い、昂揚、癒し、熱中、達成感、およびその類語を含むいくつかの収集資料をデータベース化しワードマイナーにより分析したが、データ構造が複雑な為コレスポンデンス分析によっては明確な布置が得られなかった。一方、言語群データを収集、質的分析により3志向性分離の意義や受容状態が明らかになった。なお、研究1〜3と同時並行で、感情の社会理論の構築のために、内外の文献をサーベイし、人間の感情が他者との関係において存在し、また社会的にコンストラクトされることを明確化し、今後の研究の方向性について展望をおこなった。
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