研究概要 |
海外共同研究者であるドイツ,ボンのマックスプランク研究所のDon Zagier氏との,Atkinの直交多項式系に関する共同研究において現れた微分方程式について,そのモジュラーおよび「準モジュラー」(quasimodular)な解を調べた.モジュラー解については重さ5分の整数の場合に,古典的なKlein, Ramanujanのモジュラー関数に関係する解を発見した.また準モジュラー解に関連して「extremal」な準モジュラー形式の概念を導入し,その性質について調べた.「深さ」が1および2の場合に,微分方程式を具体的に書き下し,extremal quasimodural formも具体的に漸化式で与えた.係数の数論的観察など,計算機実験によって得られた興味深い知見もあるが証明には至っていない.また準モジュラー形式の応用として,モジュラー群の尖点形式のフーリエ係数がある素数に関してordinaryであるための条件を,ある種の多項式(モジュラー形式を順次微分して得られる準モジュラー形式を,重さ2,4,6の三つのアイゼンシュタイン級数によって表したときの多項式)の可除性によって記述することにも成功した. また,古典的な意味でのextremalな保型形式のみたす合同式についてある結果を得た.selfdual even unimodularなlatticeがextremalとは,それに対応するテータ級数が保型形式としてextremalであると定義する.このときテータ級数のフーリエ係数がある合同式をみたすことが知られていた.一般にはどの次元にextremalなselfdual, even unimodularなlatticeが存在するかどうかはわかっていない.一方保型形式の側ではすべてのウェイトでextremalな保型形式が存在している.この保型形式のフーリエ係数がlatticeが存在したとして得られていたのと同じ性質の合同式をみたすことを証明した.
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