研究概要 |
移送車が物体を移送する経路を計画する際に,最短の経路を探索するだけでなく,衝突やすれ違いの干渉を回避する方策を研究した。経路計画は,各搬送車が独自に搬送経路路を探索する分散型の計画法である。各搬送車での経路計画は,出発点から到達目標点までの経路長を最小にする経路の探索を行う。その際,搬送車間での干渉度合いを示すペナルティー項を経路長に加えた評価関数の最小化問題を解くことが課題となる。本研究ではまず,コンピュータシミュレーションにより開発した計画アルゴリズムの機能確認を行った。すなわち,15台の搬送車と搬送地点候補143(ノード)の実規模の半導体工場を想定した問題について,搬送車間の衝突やすれ違いの干渉を回避した搬送経路計画が,数秒以内に作成できることを確認した。この計画手法を実機に適用する場合には,各搬送車が独自に計画した搬送経路について他の搬送車が認識しておく必要がある。このような搬送車間の情報伝達機能の実現方策についても検討した。搬送車に搭載されている計画用CPUの速度に差がある場合,全ての搬送車のCPUが同期をとり,最も遅いCPUの計算終了を待って情報交換を行うと,搬送計画の計算終了が遅くなる場合がある。この問題を解決するために,非同期の情報伝達により搬送経路を計画することにより計画時間の短縮を目指した。非同期の計画では,各搬送車が経路計画に用いる他の搬送車情報として現時点より1時点前の計画結果を利用する。5台の搬送車システムを想定して数値実験を行い,時間短縮効果を確認した。以上の研究は,各搬送車の幾何学的な大きさを考慮していないため,計画した結果の妥当性をと計画機能の性能を実証する必要がある。このため,実験用移送システムを構築した。すなわち,16ノードからなる搬送路上を5台の搬送車が走行する移送システムを構築した。各搬送車にはCPUを搭載し,共通データベースと非同期で無線通信を行った。各搬送車のCPUは,搬送指令に基づき独立で搬送経路の計画を作成する。実証システムにより,種々の移送指令を発生させて経路計画を立案し,計画結果に基づき搬送車が移動する実験を行った結果,実時間で計画が可能なこと,また衝突やすれ違いの干渉が回避できることを確認した。
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