研究概要 |
近年、天然リン脂質の1つであるホスファチジルセリン(PS)やドコサヘキサエン酸(DHA)のような高度不飽和脂肪酸が、脳・中枢神経系に対して有用作用を持つことが報告され、生理機能を持つ機能性食品及び医薬品素材として注目されている。そこで、本研究では構造リン脂質としてDHAを構成脂肪酸として含有するPS(DHA-PS)をターゲット分子とし、培養脳神経細胞における機能評価を行う事を目的とした。天然リン脂質として入手が容易なホスファチジルコリン(PC)とDHAからDHA-PSなど各種の構造リン脂質を合成した。得られた脂質をラット胎児脳から調製した初代培養神経細胞に添加し、その影響を細胞死に伴って細胞から放出される安定な酵素であるLactose dehydrogenase(LDH)活性を用いて評価した。また、Amyloid βタンパク質(Aβ)というアルツハイマー病脳細胞において顕著な蓄積が確認され、神経細胞死を引き起こす蛋白質を加えた培養系に各種脂質を添加し、細胞保護作用の有無をLDH活性で評価した。実験に使用した各種脂質には培養条件により生ずる自然細胞死を抑制する作用は確認出来なかった。しかしながら、1,2-didocosahexaenoyl-phosphatidylcholine,1,2-didocosahexaenoyl-phosphatldylserine,1-oleoyl-2-docosahexaenoyl-phosphatidylserineのAβ毒性に対する神経細胞保護作用が確認され、これら構造リン脂質の有効性が明らかとなった。
|