研究概要 |
脳血管障害、パーキンソン病等の神経疾患、更には、統合失調症等の精神疾患に対する効果的な治療として神経幹細胞移植は関心を集めており,基礎的実験が重ねられている。しかし,神経幹細胞移植における最大の問題点は,移植しても殆どの細胞がグリア細胞に分化してしまい,神経細胞に効果的に分化させられないことである。この原因としては移植部位における環境因子が大きな影響力をもっていることが考えられる。従って,本研究では,最近,申請者らがdifferential display法を用いて、ラット初代培養アストロサイトにおいて,接触阻害時に特異的に発現が増強する新規蛋Kjrを神経幹細胞移植において実用化することを目的とした。本研究の成果としては、それぞれ異なった移植環境と考えられる,スナネズミ三分間前脳虚血モデル,ラット中大脳動脈永久閉塞モデル,視床の二次変性モデルを再現性良く確立できたこと、また、それらのモデルに対して骨形成因子阻害蛋白Kjrを用いた神経幹細胞移植を実施することを試み、移植の手技を確立したことである。また、更にあらかじめ神経幹細胞に遺伝子導入していたEGFPをマーカーとして,移植細胞の転帰を様々な条件下で,神経解剖学的に詳細に観察した。即ち,各分化段階のマーカー蛋白,神経細胞やグリア細胞に対する免疫染色により,神経幹細胞が神経細胞にどのぐらいの割合で分化しているのかについて検討を行った。その結果予備的ではあるが、Kjrが効果的に神経幹細胞から神経細胞への分化を促進している様子が観察された。
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