研究概要 |
破骨細胞の形成は次のような段階を経て進行する。まず、血液幹細胞が、Macrophage-colony Stimulating Factor(M-CSF)の存在下、破骨細胞前駆細胞へと分化する。さらに、間葉系細胞からのReceptor Activator of NF-κB (RANK) Ligandが破骨細胞前駆細胞の膜表面に存在するRANKと結合することによって、シグナルが細胞内へ伝達され、細胞が互いに融合して多核の破骨細胞を形成する。その際、RANK ligandとそのおとり受容体としてのOsteoprotegerin (OPG) が破骨細胞への分化および活性化を制御している。昨年度は、アスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤であるペプスタチンAが破骨細胞形成を直接抑制していること、特に破骨細胞前駆細胞から単核の破骨細胞へ分化する段階を強く抑制していることが明らかとされた。今年度は、RANKの下流のシグナル分子を調べるために、IκB,ERK,Akt,p38などのリン酸化抗体を用いて解析を行った。RANKL刺激によるIκB,Akt,p38のリン酸化には抑制は認められなかったが、ERKのリン酸化には抑制が認められた。また、最近破骨細胞の分化・活性化において、非常に注目を集めている分子nuclear factor of activated T cells c1 (NFATc1)について解析を行った結果、タンパク質レベルでその発現が抑制されていることが明らかとなった。そこで、NFATc1のメッセージレベルでの解析をReal Time PCR法を用いて行ったところ、ペプスタチンAを作用させたものでは、有意にその発現量が減少していた。以上のことより、ペプスタチンAは破骨細胞分化・活性化を、ERKのリン酸化を抑制すること、NFATc1の発現量を抑制することにより抑制することが明らかとされた。
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