研究概要 |
ジピコリン酸(DPA)をこれまでのJanssn法に加え、HPLC法で測定し、11種類の糖類及び19種類のアミノ酸を基本培地である2%濃度の乾燥大豆タンパクに加え、静置培養を行いその生産量を調べた結果、糖としてはGlycerin、glucose、アミノ酸としてはGlu、Proに添加効果が確認された。同時に納豆菌が持つ血栓溶解酵素ナットウキナーゼ(NK)を標準フィブリン平板法で測定したところ、DPA生産量はNKとは相関しないことが分かった。 また、DPA添加は納豆菌のナットウキナーゼ生産量を高めることを明らかにした。即ち、納豆菌として宮城野、目黒、高橋、成瀬の4株は2mMのDPA濃度でナットウキナーゼ生産量を高め、例えば宮城野の場合のフィブリン平板溶解活性は非添加の2倍の256.1mm^2/30μl/37℃、4hr(ナットウキナーゼ活性として1,500FU.ml)であった。これは10種類のニコチン酸関連物質(2,3-DPA、2,4-DPA、2,5-DPA、2,6-DPA、3,4-DPA、3,5-DPA、イソニコチンアミド、イソニコチン酸、ピコリン酸)の添加比較でもジピコリン酸(DPA)が最も強力な効果を示すことが確認された。各種納豆菌のリゾチーム生産量を比較し、高生産菌(T株)を分離した。このものは極めて塩基性のタンパクであったが、一般の食用納豆菌である宮城野株における含量は少なかった。 一方、宮城野株は強いナットウキナーゼ活性と共にビタミンK2としてメナキノン-7(MK-7)を生産するが、細胞をリゾチーム処理するなどによってそれが培養液よりも菌体内に高含量水溶性の形で蓄積することを証明した。 その他、納豆菌はDPA、リゾチームなど強い抗菌成分を持つが相手が乳酸菌の場合は、その共存下ではむしろ増殖能の高まること、またヒトに対してそれが一種のprobiotics効果を示すことが確認された。
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