研究概要 |
納豆菌体中のdipicolinic acid(DPA;2,6-pyhridinedicarboxyhc acid)はJanssenらの比色法で分析した結果,最も多いものは乾燥重量にすると約2.4〜3.6%をも占めること。一方,polypeptone-Sを用いた振盪培養ではDPA含量は日東薬品工業菌が最も多く,乾燥重量1g当りにすると48.7mgであった。培地にNutrient brouthを用いた場合,DPA量はその約1/365しかなかった。2%polypeptone-Sを基本培地としてglycerolを加えた培地で,得られた日東薬品工業菌のDPA量はビタミンKの生産において最も良いとされるglycerol3%の場合,加えなかったコントロールよりも大幅に少なく,乾燥菌体1g当り0.22mg(約1/220)しかないことが分かった。 DPAへの作用としては,例えばNattokinase(NK)活性の変化を標準フィブリン平板法でみたところ,納豆菌(宮城野菌)培養液への直接の添加で2mMの場合約2.4倍亢進効果のあることが分かった。また,合成基質Suc-Ala-Ala-Pro-Phe-pNAを用いて測定したところ,DPA非添加の3.96nmol/min/mlに比べ,2mMでは43倍の16.85nmol/min/mlとなった。DPAと10種類のニコチン酸関連物質の比較ではDPA及びニコチン酸,イソニコチン酸アミドがNK生産性を高めることが分かった。なお,NKに直接DPAを添加した場合,100mMまで標準フィブリン平板による活性の差はほとんど見られなかった。 ヒト血液血小板は30μM ADPで凝集するが,5×10^<-3>M DPA存在下でdose dependentに凝集阻害されることが分かった。計算されたCI_<50>はかなり低濃度の1.8×10^<-3>Mで,これは臨床で使うアスピリンを添加した場合よりもはるかに強いもの(4×10^<-2>M)であった。
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