研究概要 |
第三次クリュニー大修道院(Saone-et-Loire県)とブルゴーニュ地方最古のベネディクト会修道院であったムティエ・サン・ジャン(Cote-d'Or県)はともにフランス革命の後、人為的に破壊され現存しない(クリュニーは南袖廊のみ現存)。したがって、それぞれの修道院建築を飾っていた彫刻の全容は掴めていない。本研究の目的は、クリュニーとムティエ各々の彫刻様式の特質を明らかにすること、2)クリュニー西扉口を請け負った工房とムティエ工房が同一であったことを検証すること、にある。 平成15年度における研究調査の内容と成果は次のとおりである。クリュニーに関しては、クリュニー南袖廊にのこる柱頭の調査。オシエ美術館およびファルニエ美術館所蔵の彫刻撮影、コナントにより発掘された彫刻断片の精査などを中心にクリュニー自体における様式の変遷を追った。ムティエについては、フォッグ美術館所蔵の柱頭に加え、ディジョン考古学博物館(Dijon, Musee archeologique)所蔵の柱頭彫刻を調査した。またムティエの工房様式の影響をしめすBussy-le-Grand教会堂の柱頭と旧Flavigny修道院の彫刻室所蔵の断片についても現地調査をした。研究に必要な文献資料は、ディジョン市立図書館、ミュンヘン美術史中央研究所、イェール大学美術建築図書館で収集した。ムティエの柱頭については、ルーブル美術館と個人蔵の分が未調査であるが、これまでの調査研究から、クリュニー西扉口とムティエの柱頭に見られる様式・技法上の類似点は明白であり、同じ工房の手になることが明らかになった。
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