本研究は、戦前の日本の軍隊に関して、平時の社会を構成する要素、すなわち社会的存在としての軍隊という視点から、新たな検討を加えようとするものである。そのような視点からは、軍隊の社会的意味は国家と社会もしくは軍隊と社会の双方向的な働きかけによって成立していたと想定される。本研究ではそうした相互の働きかけとして、軍事援護および軍事に関わるさまざまな啓蒙活動という社会的領域を設定し、メディア(主として雑誌)の機能を通してその問題を検討したい。 具体的に本研究が対象とするのは、都城市立図書館が所蔵する上原勇作文庫の雑誌である。同文庫は、本研究が扱う軍事援護、あるいは軍事啓蒙という社会的領域に関わる雑誌史料の、管見の限りで最もまとまった集積である。しかしながら、これまで調査はおろかタイトルの目録すら作成されていない。したがって、本年度は調査・研究の第一の課題として、上原文庫の現状を正確に把握し、その中から本研究の対象となる雑誌史料を網羅的に検出し目録を作成すること、第二にそれらの雑誌に関する記事索引データベースを作成することを課題とした。 実際には、上原文庫のかなりの部分が一時廃棄対象となっていたような事情もあり、保存状況が錯雑していたため、関係雑誌の抽出自体が困難を極めたが、約50タイトルの関係雑誌を抽出することができた。それらの中には『後援』(帝国在郷軍人後援会)のように、全国的に見ても本文庫が最もそろって保存されていると思われる貴重資料も確認することが出来た。現在、これらの記事索引データベースを入力作業中である。
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