前年度のアメリカ調査に引き続いて、2年日はイギリスのホームレス対策を調査しました。まず1週間をイギリス北部のリバプール市にある少年用ホームレス・シェルターで過ごしました。研究員がこういう施設に泊まるのはなかなか認められないことで、重大な研究チャンスでした。日本に存在しない施設の調査が出来ました。少年たちが24時間自由に出入りできる、「少年院」とずいぶん違う雰囲気です。リバプールの中心にある大人向きのシェルターやスープキッチンも見学して、路上のアルコール依存者とかなり長い時間を過ごしました。BBCラジオでこの研究プロジェクトに関してインタービューされました。ロンドンにも1週間の調査を行って、Saint Mungo'sという大型ホームレス支援NPOの施設を6件見学しました。毎晩約1400人の野宿者にベッドを与えるこのNPOは8件のホステル以外にも、職業訓練所、依存者専用施設、アウトリーチ・チーム等、幅広いホームレス支援を行っています。最後に、オックスフォード市の緊急避難所も見学しました。 日本に戻ってから、関東・中部・関西のホームレス施設・路上状況を見学しました。新宿中央公園のホームレス・テント村を2回見学して、東京都のホームレス対策と公園使用正常化対策を調べました.文献調査も行い、3つの論文を出版しました。一年間で約3万語(英語)のフィールドノートを書きました。 イギリスの政府はここ数年間、全国1000人以下という劇的に低いストリート・ホームレス(路上生活者)人口の統計を発表しています、しかし同時にホームレス施設が膨大な数に増えて、例えばリバプールという50万人以下の都市に百件以上のホームレス施設があって、ホームレス支援は一大産業になっています。イギリスの対策はどこまで日本のモデルになりうるのかは微妙な問題です。
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