学校教育や教育行政の分野において、情報公開はいかにあるべきか。いうところの教育情報はいかなる範囲で、どの程度まで公開(開示)されるべきものなのか。またほんらい、教育行政機関や学校は親・地域住民・生徒に対してどのような説明責任を負っているのか。 本研究は、学校教育における「親と生徒の知る権利」を現行法制上明記しているドイツと、「家庭教育権およびプライバシーに関する法律」を擁しているアメリカの教育情報法制を視野に含めて、わが国のこの法域と係わる実定法制・教育法制論・判例を分析・検討するとともに、実際の教育行政運用や学校現実を学校法学の観点から検証し、教育における情報公開と説明責任の在り方について、これに関する法制論を構築しようとするものである。具体的には、以下のような作業を行った。 (1)日本・ドイツ・アメリカの教育情報の公開(開示)法制の構造分析 (1)ドイツおよびアメリカ各州の情報公開法ならびにわが国の情報公開条例・個人情報保護条例の基本的な構造と特質、(2)「知る権利」「プライバシー権」「親の教育権」「子どもの学習権」など教育情報の公開(開示)と強く係わる権利の憲法上の位置づけと判例状況、(3)学校教育における「親・生徒の知る権利」を明記しているドイツ各州の学校法とアメリカの教育情報の公開(開示)法制の構造と運用実態。 (2)日本・ドイツ・アメリカにおける教育情報の公開(開示)をめぐる裁判例の比較法制的研究 わが国、ドイツ、アメリカのいずれにおいても「教育情報裁判」の多発を見ているが、そのなかから教育情報の種別ごとにティピカルな判例を摘出し、それらの判旨を本研究のテーマに引きつけて分析し検討した。 (3)学校管理規則の分析・検討 すべての都道府県と人口規模別に抽出した200の市町村の学校管理規則を収集し、そこにおいて育情報の公開(開示)や学校の説明責任が具体的にどのように規定されているかを分析し、考察した。
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