本研究は、総合的学習を学校教育における新しい学習活動の形態と定義し、学校現場においてそのデザインと実践に取り組もうとするものである。産業主義の時代には、学校教育は近代産業の大量生産システムをモデルにしたものだった。教科書の受動的な受容と暗記、基礎技能の形式的・機械的な反復練習を中心にした、伝統的な学校学習の形態は、グローバルなポスト産業主義社会への転換と、複雑で多様化し、技術が高度に発展した社会への移行の時代において、子どもたちの学びの多様な可能性を閉ざし、それとのあいだにミスマッチを引き起こしている。21世紀を生きる新しい教養、市民として共に生きる技法、想像力と創造性、コンピュータやネットワークの技術、メディア・リテラシーなど、複雑で高い質の新しい学びの活動形態への転換が、今日の学校教育の挑戦課題である。総合的学習は、長い時間をかけて、グループで、特定の主題を深く研究していく、プロジェクト型のコラボレーション学習である。これは、教科書の「正しい答え」を教え伝達するパターンの学校学習を乗り越え、学校の閉ざされた「活動システム」を社会に開き、子どもたちの学習活動を現実の社会的生活活動とネットワークさせようとする。このような学校教育の新しい学習活動の形態は、子どもたちの学びと成長を含む、教育の「仕事」の再定義を必要とする。そこで、1年間にわたり、大阪府下の公立小学校1校において、新しい学習活動の形態をデザインし、実践する共同研究を実施した。これは、伝統的な学校学習や学校教育の「仕事」の形態がもたらしている問題状況を現場において徐々に解決し、カリキュラムと授業の新しい形態を創造しようとするものである。教師たちによる新しい教育実践の創造に関しては、フィンランド、ヘルシンキ大学ならびにイギリス、バーミンガム大学の研究センターとの共同研究を、「活動理論研究」として進めている。
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