本研究は、学校カリキュラムの総合化(カリキュラム・インテグレーション)を進め、学校における新しい学習形態としてプロジェクト学習を開発する、という目的の下、大阪府茨木市立福井小学校において、活動理論と拡張的学習理論にもとづく介入研究を行なってきたものである。 学校の伝統的な学習は、強く枠づけられた活動構造を特徴とする。それは、細かく線引きされ区画化された教科や小さな段階に区切られた授業を通して所定の知識や技能を子どもが獲得し、その成否が試験によって検証されるような学習である。本研究は、こうした学校の伝統的な学習形態を、より創造的な学習活動へ向け転換しようとするものだった。プロジェクト学習、すなわちプロジェクト型のコラボレーション学習は、現実の生活世界や社会的活動の創造へネットワークする主題の下、グループによる長期的な探究・表現を深化させていく学習活動である。福井小学校における介入研究は、子どもたちの学習が意味ある文脈の中で生成する方法を実践的に探究したものである。そこでは、子どもたちが知識や技能を創造的に使うことがめざされた。また、創造的な学習能力の発達へ向け、教科カリキュラムの分離・区画化を横断結合させ、学校カリキュラムの総合化を推進するものだった。 プロジェクト学習の実践への介入研究は、学校現場における定期的な授業検討会として進められた。そこでは、学校の教師たちと一緒に、直面している課題を洗い出し、反省・批評・議論を重ね・実践に取り入れるといったスタイルが堅持された。こうした介入研究によって、実際に現場で生じている葛藤を出発点として、その問題を解決するにはどうしたらいいのかを、教師が協力して議論し、新しい学校システムを自律的、自己組織的に作り出していくことができるようになる。本研究は、こうして、今日求められる教師の専門性開発という課題にも応えるものとなった。
|