研究概要 |
本研究の目的は大域体上の旗多様体に付随に定義される基本Hermite定数のより詳しい解析のために,Voronoi理論を一般の代数群のフレームワークで展開することであった.今年度の研究では,そのプロトタイプとして,一般線型群の内型(inner form)におけるVoronoi型定理を,Renaud Coulangeon(ボルドー大学)との共同研究で示すことができた.具体的な説明のため,以下Kは大域体として,DはK上の中心的四元数体,GはそのK有理点の群がGL(n,D)となる代数群とする.QをGのK上定義された極大放物的部分群とすると,旗多様体X=Q\Gから基本Hermite定数γ(X,K)が定義される.これまでの研究から,γ(X,K)の下からの評価とRankin型不等式が得られているが,今回新たに次の結果を示すことができた. ●γ(X,K)の上からの評価.これは古典的な場合のMinkowskiの評価に対応する. さらにKが代数体の場合は,Gのアデール群の無限素点成分からD上のn-ary quaternionic Humbert formと呼ばれる2次形式の類似物を定義することができる.このformの全体をP(D,n)と表わす.P(D,n)の各要素Sに対し,2次形式の場合と同様な方法でHermite不変量μ(S)が定義でき,これに関して ●SがP(D,n)全体を動くときのμ(S)の最大値はγ(X,K)に等しい. が示せる.μ(S)を導入することにより,P(D,n)の要素に対しperfectionおよびeutaxyの概念を定義することが可能となる.また関数P(D,n)∋S→μ(S)の極大値を与えるSはextremeといわれる.このときVoronoi型の定理 ●P(D,n)∋Sがextremeであるための必要十分条件はSがperfectかつeutacticになることである. が示せる.
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